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「JON “ 犬が唄う?!”」
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2001.2.15 能勢 慶子
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1月の終わり、私は津山自然科学教育博物館に行きました。日頃から落葉を掃いては森の動物を想ったり、昨年秋にはこの手にトンボが止まったほど、生き物を身近に感じて暮らしている私は、その日を楽しみにしていました。
入り口すぐの展示物は血液の顕微鏡写真やら人間の生命維持機能をわかりやすく説明するための人体モデル、筋肉模型や神経系模型がありました。そして次のコーナーには人体の内臓、脳や肝臓のホルマリン漬けがありました。これはこの博物館の創立者である、森本慶三額という方の遺言による、ということが書かれてありました。自分自身を提供してまでも、生命の神秘をたくさんの人に観せたいというか、観せなければという熱意が伝わって、その後の順路は姿勢を正して足を進めると、すぐ目に入ったのが胎児の標本!!話に聞いていてこれだけは見ずに通り過ぎようと思っていたものが、視界に入ってしまったのでドギマギしてしまったけれど、創立者森本さんの強い願いが私の中に流れ込んでいたので、変な野次馬的な残酷イメージは全くない眼で、胎児をのぞき込みました。かわいい顔で眠っているようです。ほんとにです。そこには他に動物、鳥類の剥製、貝殻標本、昆虫蝶類、化石、鉱石、淡水海水魚、甲殻類、植物海草までもが展示されています。天井にとどくくらいのゾウアザラシや116年も飼育されたサンショウウオや、絶滅動物も展示されています。
地球上の生きているものを愛しいと思う人が集めたこの博物館との出会いの興奮も覚めぬ2月10日にペパーランドでJONのライブがありました。これはリアルな犬の着ぐるみを着た人が、足踏みオルガンを弾きながら、唄を唄うというライブです。どんな人が中に入っているのか、どうして着ぐるみなんか着て唄うのか色々想像して当日を迎えたわけなのですが、JONはあくまでも犬で、人間に教え込まれた唄を唄うのでなく、JONという犬が言葉を持って唄ったらどんな唄を唄うのかなという設定で唄が唄われます。('80初めドイツのアタタクレーベルにダープランというバンドがあって、その人達もぬいぐるみを着て虫の格好をして“虫さん虫さん…”とか言ってストーリー仕立ての歌を、また、N.Yでもレジデンツとかも着ぐるみチームで唄っていたのを知っていますが…。)小さな子供が、何か遊んでいる間に喋り唄いをしているような唄なので、ほほえましくもありリアルな感じです。あくまでも人に飼い慣らされた犬が…というのじゃなく自発的に犬が唄っているという感じです。もう6年になるそうです。
東京ではマンダラ(吉祥寺)やU.F.Oクラブ(東高円寺)、シャンソンバー青い部屋(渋谷)などでライブしています。最新アルバムはトリビュートアルバムが出る予定です。そのトリビュートに参加してくれた人のカバーをJONがやるというアルバムと2枚同時発売の企画が進んでいるらしいです。参加ミュージシャンはあがた森魚、三上寛、たま、RUINS、ダンボールバット、チルドレンクーデター、ソワレ、ドラジビュス、山本精一(ボアダムス)、吐息、すごいメンツです。夏にはリリース予定、他にもすごい人に交渉中だそうです。
人生が変わるような歌詞でもなく、きれいなメロディに癒されるというのでもない、自分に負けそうになる人を励ますような唄というのでもないけれど、『言葉をもたない動物が言葉を覚えて唄ったらどんなのかという気持ちに溢れたミュージシャンもいるのだよ。』という事を知っていただけたらと思って紹介いたしました。ではまたね。
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能勢 慶子 2001.02.15
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