OKAYAMA Swing Street
語れば熱き音楽人
「LIVE at BIRD その1 」
2001.02.03 岡崎 直樹
  1月22日月曜日のバードは、とてもさわやかな実力派ボーカリスト、金子晴美さんのライブでした。 初出演のベーシスト井島正雄さん、久々の出演になるピアニスト青木弘武さんという顔ぶれ。 レギュラーメンバーのツアーなので、5時から始まった音合わせもさらっと終わり、 みんなでコーヒーを飲んでいたら、青木さんが壁のサインを見て「乱闘事件ライブ」のことを思い出して・・・・・。

1992年秋、ビブラホンの大井貴司さんのバンドのライブでのことです。 たまたま岡山に来ていた劇団の関係者という若者の団体が来てくれたのですが、 少し酔っていたのか、話し声がしだいに意味のない大声のヤジに変わったので、 私が何度か制止したのですが、がまんしきれなくなってしまった常連さんたちと、 とうとうもみ合いになり、演奏は中断してしまいました。 警官がすぐに駆けつけてくれたので、幸いけが人もなく何とか収まりました。
「このままではお客さんに申し訳ないから続けよう。」と大井さんが提案しました。 自分たちはミュージシャンなのだから、音楽を通して、少しでも早くお客さんに リラックスしてもらうのが義務だと考えるのは自然なことで、その使命のために 自分自身を平静に保とうと意識するので、緊張感が高まります。

壊れたいすやテーブル、割れたグラスや皿などが散乱する中、ライブを再開しました。 その演奏は、ふだんの端正な青木さんや大井さんからはとても想像できない、 妙にエネルギッシュな演奏だったけれど、その熱意がみんなの気持ちを癒してくれたことを、 今でもはっきり覚えています。そういう状態で演奏するのはさぞかし大変だったろうとも思います。

「あの時は、妙に集中していい演奏ができた。」と青木さんは言いました。 たしかにプロなのだからそれはそうかもしれませんが、私たちの立場からすると、 なによりも平和な状況で楽しんでいただくのが大前提です。また、ライブの度に什器や備品が こわれていくとすれば、ちょっと不経済かもしれません。 (幸いなことに、それ以来事件は一度もありませんが)

ミュージシャンは、ひたむきな情熱や卓越したテクニックを持ってはいますが、 普通の状況ではそれだけでは決して楽しいライブにはならないと思います。 それで、提案します。 演奏を待つ間に十分にリラックスしてください。それだけで、ミュージシャンのストレスは軽減し (事件後の演奏と正反対ですね)、心地よい緊張感を積み重ねるという彼ら本来の仕事に 専念できるのです。結果、ジャズの醍醐味をより多く共有できるはずです。

当日の金子晴美ライブが大変楽しかったのは、聞き手のみなさんの無意識のご協力が あったからこそと確信しています。
岡崎 直樹 2001.02.03


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